『俺の性旬まだ終わらない』

 

 ある日の帰宅後――

 俺はずっと自室で彼女――美術部の少女にフラれてしまったあの日の事を考えていた。

 

「心が辛い……でも、もう一度だけで良い。チャンスが欲しい……」

 

 フラれた今も、俺は少女の事を好きなままだ。好きすぎて心がとても苦しくて切ない。

 もっと時間をかけて、じっくりと少女と仲良くなるべきだったのかもしれない。

 

「ああ……どうしよう……」

 

 俺が少女に告白した日に戻れたら……。

 告白した時の記憶を、少女の中から消す事ができたら……。

 

「いっその事、俺から記憶を消し去ってくれよ……神様!」

 

 そんなファンタジックな事が現実的に起こらないことぐらい、俺にだってちゃんとわかってる。

 それでも何とかして、少女に再び告白するチャンスが欲しかった。

 

「何か良い方法はないのかよ……」

 

 あの日の事を無かったことにしたい。

 少女に嫌われたくない。

 俺でも少女でもいいから、記憶が無くなれば良いのに……。

 そんな事ばかり俺の頭の中で反芻し続ける。

 

「どうすれば良いんだよ……くそっ!!」

 

 取り戻せない過去にイラだった俺は、半ばやけくそ気味だった。

 そして机の上で散乱している本や消しゴム、それを乱暴に掴んで壁に投げつけようとした瞬間――

 

「これは……」

 

 古ぼけた一冊の本。それは記憶喪失を題材にした医学書。

 そういえば確か、この中に記憶をコントロールする方法ような項目があり、興味本位で少しだけ読んだような気がする。

 

「そうか……これを使って少女の記憶を消すことができれば、俺が告白した事もなくなるかもしれない」

 

 それだけじゃない。

 上手くいけば記憶を消し、更に新たな記憶を擦り込めれば……もしかしたら俺の彼女になってくれるかもしれない。

 

「普通で手に入らないのなら、普通じゃないやり方で手に入れるしかない……」

 

俺の妄想を現実にしてしまえ。

俺の手で記憶喪失少女を作ってしまえ。

俺が少女を手に入れるには――

 

――少女の記憶を抹消して新たな記憶を擦り込むしかない――

 

 無謀な事は理解している。

 だが、やってやる! こんな辛い思いをするくらいなら、何としてもやってやる!!

 俺は微笑を浮かべながら、明日がくるのを待ち続けた。

 

『次回 100式  俺の性旬は戻らない……』

 

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